【You knock at my door】



 心のずっと奥底で、誰かがノックしている音がする。
 不規則に、乱暴に。
 それが誰かは解らない。
 でも、扉を開けてくれと、急かしている。
 
 
 
 
「お前、あのソルジャーのザックスと仲いいんだってな」
 言葉の裏に苛立ちを薄く張り付かせながら、不意に投げ掛けてくる。クラウドは足を止めて、ゆっくりと振り返った。
 もう聞き慣れた台詞。クラウドに対するやっかみの一つ。
 クラウドより入社時期が早いというだけの、先輩。嫌味ったらしく相手は、上から舐めるようにクラウドを見た。
「……そうだけど」
「なんでお前なんかが、ソルジャーとつるんでるんだよ」
 そんな事云われても。クラウドはあからさまに不機嫌な顔をしてみせた。たまたま知り合って、以来言葉を交わすようになり、現在に至る。ほんの些細な偶然。重なって、それはクラウドとザックスを繋げた。
 理由なんて知らない。
「別に……関係ないだろ」
 顔も知らない他人からわざわざ確認される謂れはない。クラウドはヘルメットを小脇に抱えると、その場を後にする。
 ……なんでお前なんかが。それはクラウドだって解らない。知らない。
 ザックスが、何故自分に親切にしてくれて、大事に扱うのか。
 クラウドは立ち止まる。ポケットに仕舞われた携帯電話が音もなく震える。着信。
 噂をすれば、だ。
「もしもし?」
『おー、クラウド? 今ドコ?』
「訓練終わったから、部屋に帰るところだけど」
『そうか。……あのさ、夜、そっち行っていい?』
「……断ったって、勝手に来るくせに」
 クラウドは通話を終えると、じっと携帯を見つめ握り締める。
 ──俺は、なんでザックスと一緒にいるのだろう。
 周りから見れば変わった関係だと罵られ、それでも彼は傍に寄ってくる。払っても、きっと堪えない。
 俺は、一緒にいてもいいのだろうか。
 ……ザックスが部屋に来る事は、特別珍しい事じゃない。むしろ日常茶飯事だ。なのに、それだけで胸がざわめくのはどうしてだろうか。
 クラウドはロッカーで着替えを済ますと、時計をちらりと確認した。夕食には間に合うだろうか。何か、ザックスの好物でも買って帰ろうか。そんな事を思いながらロッカー室を後にする。
「おい、クラウド」
 すると、そのタイミングでやってきたのは先ほど声を掛けてきた先輩だ。その後ろに複数の仲間たちがいる。嫌な予感。それはすぐに的中した。
「ちょっと飲みに付き合えよ。今日は時間あるだろ?」
 有無は云わせない、という風に肩を掴む。痛みに不快感を示すと、相手はわざとらしく壁に突き飛ばす。
 もしかしたら、さっきの電話のやり取りを聞いていたのかもしれない。クラウドはほんの少し後悔した。周りを見る余裕なんてない。けれど、今日は明らかに失敗した。
 絡み方がいつもと違う。上手くかわす事も出来ない。
「悪いけど……用事があるから」
「あ? 俺たちと飲むより大事な用ってなんだよ」
「別に……関係ない」
「俺たちに云えない用事? お前、最近生意気だな」 
 ……生意気かどうかは知らないが、勝手に悪態をついてきたのはそっちだ。いちいち相手にするのも馬鹿らしい。クラウドは急いで立ち去ろうとしたが、行く手を他の人間に阻まれる。
 クラウドを囲むように男達が上から睨めつけてくる。射竦められて、クラウドは顔を背ける。
 逃げられない。
「っ……!」
 腹に一発。避けられない距離で。クラウドはまともに喰らって身体を九の字に折り曲げる。
 膝を付く事も赦されず、腕を捕られて立たされる。
 周りに人の気配はなく。たとえいたとしても、誰も助けてはくれないだろう。そういう空気だ。
 クラウドはなんとか堪えて、目の前の男を睨み付けた。
「……なんだ、その目は」
 もう一発。今度は膝で。
 一方的に痛めつけられる。まるで子供の喧嘩のようだ。顔は決して殴らない。傷が見えれば、上官から咎められる。痕跡を残さずに深手を負わせる。リンチの常套手段だ。
 クラウドは泣き言は漏らさず、ただ耐えていた。嵐は過ぎてしまえば怖くない。そうわかっているから。
「……けっ! こんな弱っちいヤロウが、なんでソルジャーと!」
 吐き捨てられる。
 ずるずると壁際に背中を預け、しゃがみこむ。いいように暴行を続けていた彼らは、その手応えのない無様な格好のクラウドに飽きたのか、声を掛け合って廊下を後にする。
 けほけほと咳き込んで、クラウドは膝を抱えた。
 何をした訳でもない。ただ、ザックスと仲が良いというだけで。望んだことじゃないのに。クラウドは悔しさに涙を滲ませる。
 ──それでも、一緒にいたいと思うのは、悪いことなのだろうか?
 眩暈がする。クラウドはしばらく黙ったまま、その場にうずくまっていた。
 
 
 
 
 痛む腹を抱え、兵舎の自室に戻ったのはもう夜の十時を回っていた。人の気配のない、灰色の部屋。ロックを解除すると、冷たい空気が廊下に流れ込んできた。
 ザックスはまだ来ていない。急ぐ必要もなかったかと、クラウドは寂しく思う。
「……」
 結局買い物も、夕食の用意すらしていない。
 ただ、傷が疼く。
 クラウドはソファに深く沈み込むと、涙で腫らした顔を拭う。
 ──俺は、間違っているのだろうか。所詮身分の違う相手だ。好意を持つ事すら罪なのか。クラウドは仰向けに寝転ぶと、白い天井を見つめた。
 誰も認めてくれない。弱い自分と、彼とでは誰もが釣り合わないと云うだろう。
 ぎゅっと左胸の辺りを掴む。とく、とく、とく。不規則に脈を打つその部分が、締め付けられるように痛い。怪我のせいではなく、内側からシグナルを放つ。
 心の奥底に扉があって、開けてくれとせがんでいる。
 そんな音が聴こえる。
「……ザックス」
 誰も二人を祝福しない。ザックスに、何も与えることが出来ない。なのに。
 どうして求めることを止められないんだろうか。
「俺は……」
 心臓の音が鳴り止まないのと同じように、響く。
 ノックの音。
「クラウド? いるのかー?」 
 唐突に、闇を裂くかのように扉から声が投げ込まれた。ザックス。あわててクラウドは起き上がり、リビングを通り抜ける。
 手を伸ばした先で、扉が開く。
「ザックス……!」
「悪い、遅くなった。……って、クラウド?」
 何も云わず、ただ抱きついた。情けない顔を見られたくなかった。それ以上に、今、ザックスに触れたかった。
 ザックスは動揺しつつクラウドの背中を宥めるように撫でる。
「そんなに寂しかったのか、クラウド」
「……違う、そんな訳ないだろ」
 いつもの調子で返すと、ザックスが声を立てて笑う。ザックスの背後で扉が閉まると、ますます腕の力を強くした。
「……何か、あったんだろ」
 声のトーンを抑えてザックスが云う。何もかもお見通しという風に。当たり前だ。クラウドは息を詰まらせる。
「何があったんだ?……って、訊いてもいいのか?」
「……」
 云えない。嫉妬の対象にされたなどと、増してや一方的にやられたなどと。
 だけど、今はこの腕が、温もりが愛おしい。
 きっとあいつらは知らない。こんなに気持ちのよい感覚がある事を。抱き締めて、抱き締められる事がどんなに辛い傷をも癒す事を。
「俺は……弱い」
「……」
「……強くなりたい」
 強くなりたい。
「うん」
 ザックスはただうなづいて、クラウドの頭を撫でた。子供をあやすように、それだけ。
「何があったかわからないけど、大丈夫。クラウドは強くなれる」
「……適当な事云うなよ」
「強くなれるのは、『弱い』と自覚してる奴だけだからな。それに、信じてるし」
「何を?」
「クラウドは強い。俺は、それを知っているから」
 嘘だ。それは詭弁だ。けれど。
 何故だろう。その言葉に勇気付けられるのは。
 ザックスの云う事なら全て信じられる。自分自身を信じられなくても、クラウドを信じるザックスならば信じられる。
 息を呑む瞬間。クラウドは自分から唇を重ねた。僅かに触れて、離れる。
「ク、クラウドッ……?」
「……悪いか?」
 少し拗ねたように呟いて、瞳を逸らす。ザックスは混乱した様子で頭を振る。
「いや、珍しいなって思って……」
「……そんな気になる時もあるんだ」
 自身の唇を親指でなぞる。まるで挑発するように。
 もう一度深く抱き締め合い、ザックスの胸の中に顔を埋める。
 心音。繋がった先で、優しく触れ合う。
 この音。
 ノックしているのは誰でもない、ザックスだ。
 そして、自分自身だ。
 問い詰めるように、激しく。時に柔らかく。
 今、心の扉を開けたのは。
「ザックス……」
 ──たとえ間違っていたとしても。
 絶対に離れはしない。
 誓いと共に想いを胸に抱き。
 その向こうの、扉を開く。
「……もう一回、キス……していい?」
 ザックスがおずおずと尋ねる。答えは、自ら返す口付けで塞いだ。甘い吐息が暗闇を満たす。──それからはもう、互いしか見えなかった。
 
 
 
 
 闇の中。窓から見える月が室内を照らす。明かりなんて必要ない。ただ求め、手を伸ばせばそこに触れる。
 ほんの少し迷うように指先が震える。何処に置いていいのかわからず、手元にあるシーツを掴んだ。
 手繰り寄せるように、ザックスが背中を撫でる。総毛立つ。
「ん……っ」
 いつにもない性急さで服を捲り上げると、その下に隠した白い肌を撫でさする。
「っ……つっ」
「悪い。痛かった?」
 腹の傷。酷い痣になっている。クラウドは弁解できず、傷から目を逸らす。
「……これ、こんな怪我……平気なのか?」
「平気……だ」
 ザックスは何も云わず、その傷口にそっと口付ける。不思議なもので、ザックスの熱い吐息が掠めた瞬間、痛みは和らいだ。まるで魔法でも使ったかのように。
「今日は、あんまり無理出来ないな」
「そんなこと……っ」
 構わない、と云おうと思ったが口をつぐむ。下手に否定すると、どこまでも際限なく無茶をさせられるからだ。かっと赤くなって、クラウドは黙った。
 固く閉ざした唇を割るように、ザックスが唇を重ねた。強引に舌を差し込んで、クラウドの呼吸を唾液ごと絡め取った。歯列をなぞり舌を弄び、どこまでも濃厚な口付けは止まない。口腔内を犯され、乱される。
 朦朧とする意識の中、理性を流されまいとザックスの肩にしがみ付く。 
 傷を避けるように、ザックスの右手が動く。服の下を潜り、手繰るように指先を滑らせる。脇腹を抜けて、胸元をまさぐる。
「ふ……っ、う……ん」
 ザックスは下唇を指で撫ぜ、薄く開いたその中に侵入する。追い出そうと舌で押し出しても、捕らわれてしまう。溢れる唾液が頬を伝り落ちていく。
 クラウドの上着を一気に脱がし、ベッドの下に放る。ひんやりとする風が、湿った肌の表面を通り過ぎる。
「んくっ……、や、……ふ、う……っ」
 仰け反らせる喉を舐め上げ、ゆっくり下に降りていく。唾液を纏わり付かせたその指で、乳頭を弄る。
「……っ」
 歯を立てて、突起を嬲る。甘く噛んでは舐め取る。
 脇腹を抜け、傷む腹部を避け、ザックスはズボンを下着ごと引き摺り下ろす。
「クラウド……もう、こんなにしてる」
「そんなの……っ、仕方ないだろ……」
 硬く張り詰めた自身を間近に見られて、クラウドは恥ずかしさに身を竦める。ザックスはふっと笑って、それを躊躇いなく口に含んだ。
「う、やぁ……っ」
「嫌、なんかじゃないだろ?」
 根元まで銜え込み、舌先を尖らせて裏筋をなぞる。先端に吸い付いては唇で食む。クラウドの唇から零れるのは甘い悲鳴。陰嚢をくねくねと捏ね回し、芯を扱き上げる。
「あ、あぅ……、や、ザックス……っ、駄目……っ」
 堪えていたものを解き放しそうになる。それに気付いてか、ザックスは付け根を握り吐精を遮る。
「な、なに……っ、や……離し……」
「どっち? イきたい?……それとも、離して欲しい?」
 微妙な昂ぶりを塞き止められて、今にも爆発寸前だ。
 鈴口を濡らす先走りを爪の先で拭う。僅かな刺激がクラウドを根本から揺さぶる。
 目尻に涙がうっすらと浮かぶ。
「……ずる、い……!」
 ザックスの黒髪をがしっと掴んで、身を乗り出す。
「もっと……して、ザックス……」
 いつもなら絶対に云わない台詞。きっと、今この瞬間だから口に出せる。
 素直に求める。
 ──ザックスを。
 この気持ちを何と呼ぶのか知らない。だけど、心を叩く音は止まない。木魂する。繰り返し、血を滾らせ身体中を駆け巡る。
 それは皮膚を伝い届くだろう。
 目の前の、愛しい人に。
「クラウド……。わかった。いくらでもやるよ」
 目を閉じると、羽のように幾つもキスが降ってくる。鼻先を掠め、それは舞い落ちる。
 ザックスは自身の下着を脱ぎ捨てると、クラウドに向き直る。太腿の間に手を入れ、開くように誘導する。
「慣らすから……力入れないで、な?」
「う……」
 解っていても、力が入ってしまう。割れ目を沿うように指先が割り込んできた。一番の窪み、入り口の周囲を撫でて、それはゆっくりとクラウドの内部に侵入する。
「んあ……っ、は、う……」
「なか……熱いな。怪我のせい……?」
 熱い。
 中身を暴かれるように。想いを見透かされるように。
 抉られる。
「ひぁ……っ、あ、ザックス……!」
 腹に力を入れようとして、出来なかった。なすがままに指先で翻弄される。二本、三本と増えるにつれ、固く閉じたココロまで開いていくようだ。
「ザ……ックス、っ……」
「そんな目で見るなよ。……手加減出来なくなるだろ」
 指が引き抜かれる。それは合図だ。ザックスは膝を高く上げさせると、腰を摺り寄せてくる。カウパーに塗れた雄が入り口をぬるりと汚した。
「……入れるよ?」
 我慢の効かない様子を見せる雄は、何の抵抗もなく挿入されていく。肉の擦れる感触は、嫌いじゃない。
「解るか? クラウドと繋がってるトコ……」
「いちいち……っ、きくな!」
「可愛いな、クラウド」
 腹部を庇うように腰を上げる。最も奥深くまで自身を減り込ませると、ザックスはぐっと一突き、腰を動かした。
「うぁ……っ!」
 全身が震える。引き抜いては押し遣る。徐々に、腰を引く速度が速くなる。穿つように、ザックスは前後にクラウドを揺さぶる。
「ひぁ、あ、……んぅ、ア……!」
 引っ切り無しに声が漏れる。抑える事が出来なくて、クラウドはただ皺だらけのシーツに爪を立てた。
「駄目。……そこじゃ、怪我しちゃうだろ」
 その手を掴んで、ザックスが肩に乗せる。抗えず、突かれる度にザックスにしがみ付く。クラウドは、せめてザックスに傷は付けないようにと、必死で抑え込む。
「クラウドの痛みなら、俺が全部引き受ける。だからお前は……」
 泣かないで。
 流れる滴を舐め取って、ザックスが応える。
「ザックス……っ、ザ……ックス、ふ……」
「ここ、イイ? 気持ちいいなら、教えてくれよ」
「ソコ……っ、んっ……おかしく、なる……っ」
「イイよ。もっと、クラウド……っ」
 貪欲に求め続けること。今目の前にいる相手を信じ、そして全てを晒け出す事。
 この瞬間にも、蕩けるように重なり合うココロ。
 結合したその部位が泡立って、溶け合うようだ。昇り詰め、高め合う。どちらとも解らぬまま手を取り合い、深く深く口付ける。
 快楽の波。
 せめぎ合い、溺れる。
「ザックス……っ!」
 大きく脈を打つと、瞬間クラウドの欲が放たれる。堪えていた分を空っぽになるまで解き放つ。ザックスもまた、愛しいその最奥へ精を叩きつける。
 卑猥な音を立て、それを抜き取る。ザックスは力尽きたようにクラウドの上に覆い被さり、胸に顔を埋めた。
「……いっぱい出したな、クラウド」
 手探りで腹の上を撫でる。溜りを作る精を掌で拭う。
「……なぁ、クラウド」
 荒げる息を整えるクラウドに、ザックスは更に口付けを与える。
「何かあったら……云わなくてもいいから、合図してくれよな。俺、傍にいてやれないし……何でもいいから、教えて、な?」
 熱っぽく潤む視界が涙で滲む。ザックスにバレないように汗と共に拭って、その広い背中に腕を回した。
 ──傍にいなくても、伝わる想いは一緒だから。
 快楽の波が引いた後で、腹が痛むのを思い出した。でも、どいてくれとは云い出せない。
 優しい温もり。それを突き放つ事など出来ない。
 ……これが罪でも罰でも、一向に構わない。
 離したくない。だから、耐えてみせる。
 傷ならきっと癒えるから。
 
 
 
 
 だるい身体を引き摺って、クラウドは訓練施設のロッカー室にいた。……無理はしないという約束を反して、ザックスと朝まで過ごしていたせいだ。寝るタイミングをすっかり逃して、気が付けば朝日が昇っていた。
 首元のキスマークを隠すように襟を整えて、クラウドは着替えを済ます。
 メットを抱えて、部屋を出た時だった。
「……っ」
 昨日の連中が、廊下の隅を陣取っていた。訓練場に行くにはここを通らずに無視する訳にはいかない。
 しかし、怯えなど一ミリも出さず。
 クラウドは足を早めた。
「……待てよ。挨拶無しかよ、クラウド」
「……おはようございます」
「いい度胸してるな。……あんだけ痛めつけても、まだ懲りないってか」
 神羅なんて辞めちまえ。そう云いたげに斜め上から眺め下ろす。
 瞬間、クラウドは相手の頬をはたいていた。
「なっ……!?」
「……汚い顔を近付けないでくれないか」
 売られた喧嘩なら買う。男の嫉妬なんて見苦しいだけ。
「ザックス……ソルジャーなら、こんな小さな事に突っかかったりしない。神羅に合わないのはそっちじゃないのか?」
 途端に、相手は瞬間湯沸かし器のように顔を赤らめ、激昂する。しかし、そんな挑発に乗っては負けだと認めて、唾を吐きかけて去っていく。
 クラウドはぐっと胸の上を押さえてみせた。
 変わらずに響く、心音。
 ザックスがくれた、甘い疼きのように。
 ──扉は開いた。もう誰もノックする人はいない。そこに確かに残る、永久なる約束。微かに聞こえる鐘の音のように、広がって消えていく。




   END
UP:2007-10-31