【いつまでも慣れない】
ふと横を見たらザックスが顔を寄せていて。思わずクラウドは肩を怒らせる。
「なっ、なに!?」
「そんなに驚かなくたっていいだろー? 軽く傷付く」
唇を尖らせるその先が耳の傍を掠める。吐息が、触れる。
「近付きすぎだって……!」
「この方が話しやすいだろ? クラウド、時々声かけても聞いてない時あるし」
聞いてない訳じゃないんだけど。クラウドは反論しかけて口を閉じた。
「そういうところがクラウドらしいんだけど」
まっすぐに見つめてくる深い蒼の瞳。ほら、また。気がつくと目が合う。そんなに俺だけを見ていて楽しい? クラウドは胸の奥がくすぐったくなる気持ちを抑えられなかった。
ザックスは、こんなに近くにいるのに普通に笑ってみせるんだ。
鼓動が早鐘のよう。
気付いているだろうか。気付いていないだろうか。こんなにも逸る気持ち、くれるのはザックスだけだということに。
「好き、クラウド」
バッと身を引き剥がす。そんな耳元で不意打ちに囁くなんて反則過ぎる。クラウドは赤面してザックスに背を向けた。
「なんで、ザックスは……っ」
そんな簡単に言葉に出せるのか。
聴こえていないフリをして、いつも見逃しているけど。
ザックスが辿る視線。
いつも自分に注がれているなんて、信じられない。
震える肩をそっと包み込むようにザックスが抱き締める。びくっと戦いて、どうしていいか解らず身構える。
「俺はいつだって本気だよ。……わかってるだろ?」
耳たぶを甘噛みして、心を打ち抜く。
いつまでも慣れないこの距離。
こんなに傍にいるのに。
──おまえにとっては、トモダチもコイビトも、同じ距離なんだろう?
信じないよ、そんなの。
おまえの本気を。
もっと俺だけを見て。近くにいて。もっと、もっと感じさせて。
「……ザックスだけをくれたら、信じてやる」
囁く声だけでなく、おまえをくれ。
そうしたら、伸ばした手の届くところにあるこの心臓はおまえに捧げるから。
「いくらでもやるよ」
耳を塞いでいるクラウド、俺の声を聴いて。求めるなら、与えるから。
「だから、好きだよ」
……好きだよ。
ほんの少しの寂しさを含んで。クラウドは包み込む腕の心地よさに浸りながら、その告白を聞き流す。信じないよ。頑なな心は凍り付いてまるで冬のよう。
だけど、この腕が溶かしてくれる。カラダの距離とココロの距離が近くなるように、ぎゅっと力を込める。
俺が慣れるまで、繰り返して。
何度でも。
ずっと。
END
UP:2007-11-16