【訓練】


 梢が風に啼く。葉が千切れてクラウドの目の前に飛び散った。運ぶのは湿った土の匂い。クラウドは背中の剣に手を伸ばすが、何も起こらないと踏んで安堵の息をつく。
 次のミッションまでの短い間、クラウドは治安自治部門とソルジャーの合同訓練に参加する事になった。戦争が終結して以来気がたるんでいる。隊長に叱咤され、若い兵士達は揃って訓練場に派遣されてきた。一介の下級兵であるクラウドに選択権はない。やれと云われたらやるしかない。
 それに、ソルジャーと剣を交える機会は滅多にない。不安と期待が入り混じったまま、命じられたポイントで待機する。
「……遅いな」
 呟く。予定では、相手のソルジャーはもうクラウドのいるこの地点に到着しているはずだった。埃まみれの腕時計を何度も確認しつつ、クラウドは空を仰ぐ。ソルジャー・クラス1st。まさか「アイツ」が来るんじゃないかと思いながらも、ともすれば緩みそうになる気を引き締める。
 もし仮に「アイツ」だとしても、少々遅すぎではないか。……いや、「アイツ」ならこのぐらいの遅れも当然だ。疑心暗鬼に陥りながらも、クラウドはかぶりを振る。
 せっかくの『ソルジャーとの合同訓練』なのに。
 たった一人が気になると、なかなか思考から離れてくれない。
「……馬鹿」
 ここしばらくまともに会えていない。一度も連絡も寄越さない「彼」に会ったら、何を云い出すか自分でも見当がつかない。
 快晴。頭上を見ると、今にも木々の隙間から零れ落ちそうな青い天蓋が覆い尽くしている。
 思わずマスクを外して、しばらく空を眺めていた。
 まるで、あの魔晄を浴びた瞳のような……吸い込まれそうな、青。
「ザックス……」
 息をするように自然に名を呼ぶ。
 その刹那。
「おいおい……そんなに俺に会いたがってたのか、クラウド?」
 それは不意打ちと呼ぶには唐突過ぎた。天から声と共に降ってきた『モノ』。黒くて大きい、モンスター……と見紛う程の。思わずクラウドは柄にもなく悲鳴を上げそうになる。
 実際には声は出なかった。むしろ、呼吸困難を起こしそうに咳き込む。
 不覚だった。想像していたものが不意をついて現れると、人はこんなにも混乱するものなのか。クラウドは手にしていたマスクを相手に投げつけた。
「いつからいたんだ、ザックス!」
「おっと。いや、結構前から。いつ気がつくか試してたんだけど」
 マスクを上手くキャッチして指先でくるくる弄びながら、ザックスが嘯く。まさか頭の上にいるとは考えなかった。うっかり口を滑らせて事を後悔し、気付かなかった自分の能力の低さに悲観する。
「訓練ご苦労様です!……ってな」
「馬鹿にしているのか?」
「そんなことないって。まさかこんな所で逢えるなんて思ってなかったからさ」
 マスクを投げ返して優雅に微笑む。
 腐ってもソルジャー。気配を消すのは動物並みに上手い。
 だけど、たるんでいると云われても仕方ない。
「この辺はクラウド一人だけ?」
「そうだ。ザックスこそ……こんな訓練に参加するなんて」
「大きい任務がないから暇で暇で。やっぱり身体動かしてないと、なんか落ち着かなくて」
 流石体力バカ……とは云わずに、クラウドは適当に相槌だけ打つ。
「……とにかく、訓練なんだから俺と戦ってくれ」
 マスクを地面に置くと、背負った剣を手にする。
「本気?」
「あぁ」
「クラウドと戦えるわけないだろ」
 そんな事は百も承知だ。というより、クラウドだって同じ気持ちなのだ。
 とはいえ、一度油断してしまった以上、もう気を許せない。ここで負けたら隊長に何を云われるか解らない。
 はなから勝ち目のない勝負でも。
「ここは通さない……!」
「ちょっと待てよ!」
 クラウドは問答無用で切りかかる。斜めに剣を薙ぐと、ザックスが一歩引いて避ける。
「本気を出せ!」
「あのなぁ、俺が本気出したら……わかるだろ?」
「ザックス!」
「怒るなよ……別に悪気があったわけじゃ、」
 云い終わる前にクラウドは上段から斬りつけていた。しかし、瞬時にザックスがバスターソードを抜き、一撃でクラウドのその手から剣を払い落とした。疾風。痛みもなく、後には木の葉が舞い散るだけだった。
 一瞬で勝敗は決まった。ザックスが本気なら、今頃腹に一発入れられて伸びていただろう。無駄のない動きだった。クラウドは、武器がその手にない事を数秒遅れて気付いて、冷たい汗を流す。
「……ホラ、な」
「っ……!」
「だから、悪かったって! クラウドと戦いたくなかっただけなんだってば……」
 一度だけなら偶然、しかし二度目なら必然。適うはずがない……ソルジャー・クラス1stに。
 ザックスはパフォーマンス的にくるくると剣を回して背負い直す。
「……やっぱり、ソルジャーは凄いな」
「俺の実力だ!」
「そうだな。……ここは通っていい。先に進めよ」
 完全に敗北だ。道を譲ってクラウドは苦笑する。
 悔しいけれど。しかし、また一つ目標が出来た。
 自身がソルジャーになる為に。
「……クラウド」
 小枝を踏む音がやけにリアルに聴こえた。ザックスに背を向けた途端、抱きすくめられるようにして何かに自由を奪われる。
「何するっ……ザックス!」
「シーッ……静かに」
 軽くいなして、ザックスはクラウドを近くの木の幹に押し付けた。
「ふざけてる場合か……っ」
「このまま、別れたくない」
「今は訓練中……!」
「黙れって」
 マスクを外してしまった事をこれほど後悔した時はない。後ろから堂々と唇を奪い、クラウドの言葉ごと掬い取ってしまう。
 そうすれば、抵抗出来ない事を知っていて。
「ふっ……う」
 肩越しのキス。初めは勢いに任せて、力づくで。唇の輪郭をなぞる様に舌が動くと、堪えきれず息が漏れる。その隙を逃さず、ザックスはあくまで優しく侵入してくる。
「ん……っ」
 生暖かいそれを重ね、嬲り、捻じ込む。まるで陵辱するような、深い口付け。
 抗う気を一切奪う。
「……もうちょっとだけ、一緒にいたい」
 額をこつんと合わせ、ザックスが囁く。迷いなくまっすぐに見つめてくる瞳。
 空の色。クラウドは何も云えなくなってしまう。
「……ごめん」
 一言。沈黙のクラウドに詫びる。
「謝るなら最初からするなよ」
「……怒ってる?」
「俺だって……」
 云いかけて、やめる。――逢いたかった。訓練中でも、その心を占めるくらいに。
 無意識に背に腕を回し、そっとザックスの服を掴む。目の前にいるという安心感。子供っぽい独占欲だなと、クラウドは胸の内で苦笑する。
 ザックスはその意味を解し、クラウドの腰に手を添えて抱き締める。
「逢いたかった」
 心を読まれたかとクラウドは錯覚する。ザックスの力強い腕の中で、訓練による緊張が解れていく。
 ザックスはこめかみに触れるだけのキスをして、笑う。
「だからクラウドに逢わないでおこうと思ったのにな」
「……なんで」
「こういう事したくなって、訓練どころじゃなくなるから」
 疑問形に歪んだ唇を塞いで、ザックスが云う。
「ばかっ……人が来たら」
「大丈夫。誰もいない。この辺の兵はみんな寝てる」
「! いつの間に……っ」
「俺の実力だ」
 この短時間で、クラウドに気付かれず全ての訓練生を伸したというのか。
「このまま逢わないで……行こうかと思ったけど」
「……ザックス」
「クラウドがいけないんだぞ」
 無自覚のままに誘惑するから。そう云いたげにザックスは耳元に唇を寄せる。耳たぶを口に甘く含んで、舌で軽く弄ぶ。
「んっ……やめ、ザック……ス」
「嫌だ」
 軟骨を沿うように舌を這わせ、音を立てて嘗め尽くす。首の下では服の裾を捲る手が忙しく動く。
「ふぁ……あ、ん……」
 鼻先に当たるザックスの髪。汗と埃とが入り混じるザックスの匂い。
 生存本能と性欲には密接な関係があると、古い記憶が蘇る。男は命の危機を感じると、欲情する。クラウドはぼんやりとした頭で一生懸命記憶を探るが、自身の満たされない吐息で霞んでしまう。
 何度か戦闘を繰り返したザックスの肉体は、熱く火照っている。
 まるで動物だ。
「んっ……」
 腹から胸の先端をまさぐるようにして、ザックスの指先が到達する。革の手袋の感触がどこかもどかしい。
「すぐ固くなるな、クラウドのココ」
「ザッ……クス」
「そんな声で呼ぶなよ」
 胸の突起をゆっくりと撫で、こりこりと摘み上げる。転がすように弄られて、堪らずクラウドは声を震わせる。
「やだっ……う……っ」
「……じゃ、コレは何だ?」
「しらなっ……んっ」
「ホラ、こっちだって……」
 ザックスの左手が服の上から太腿から内股にかけて撫で上げる。それだけのことに、思わずビクっと肩を縮込ませる。下腹部に置いた手はそのままに、ザックスは乳首を可愛がる。愛おしそうに。
「固くなってる」
「そんなの……っ、ザックスが触るから……」
「俺のせい? 素直じゃないな、クラウド」
 ちゅく……と耳元から離れて、意地悪く笑う。余裕のある振りをして。
 どちらが素直じゃないんだ。クラウドは精一杯の抵抗の証として睨み付ける。
 邪魔だと云わんばかりに手袋を口で外して、ザックスはクラウドのベルトに手を掛ける。止める間もなく下着ごと膝まで降ろされて、抗う術をも失ってしまう。
 すでに質量を増してそそり立つ花芯を曝け出すように木に背を預け、クラウドは力なく俯く。恥ずかしくて、とてもじゃないが正視出来ない。
「先っぽ、濡れてる」
「っ……」
 熱い掌に包まれて、扱き上げられる。濡れた先端を親指で擦り、溢れる体液を爪で掬い取る。
「アッ……あ、やだ……」
 ザックスは地に膝をつけると、躊躇いもせず芯を銜えた。丸まった背中に手を伸ばして、力の限りしがみついた。
「やぁ……あ、ア……! はぁ……ハ、やぁ……っ」
 裏筋を丹念に舐め上げては吸い付く。唾液と先走りとを絡ませて、舌を亀頭にあてがい前後に動かす。尖らせた舌先でちろちろと鈴口をこじ開けて、漏れ出てくる苦い液体を舐め取る。
「はぁ、やっ……ア、あぁ……!」
 引っ切り無しに甘い声が喉の奥から込み上げてくる。風に溶けて、周囲に響く。熱い。しがみつく指先に力がこもる。
 粘膜を舐り露を貪り飲み込む。唇から滴る唾液が地面の色を変える。
「だめ……っ、ア、やぁ……あ、あぁ……、んっ……」
「……キモチイイ?」
「ザ、クス……っ、あ、で、出る……!」
 立ち昇る快感を留める事が出来ない。何かが身体の奥で弾ける。途端、クラウドはザックスの口の中に迸る精を放つ。
「はぁ……!」
 大きく喘ぐように息を吐き出す。全てを出し切ってもザックスは赦さないという風に吸い付いて、尿道に残るそれを飲み込む。がくがくと、膝が走り抜ける悦楽に戦慄く。
「……いっぱい出したな」
「……馬鹿っ……」
「なんで? 気持ちよかっただろ?」
 否定も肯定もせず、クラウドはそっぽを向く。こんな場所で達してしまうなんて。冷静になった頭で羞恥に頬を染める。はしたなく半開きの口から垂れる唾液を拭う。
「あ、そのカオいいな」
「何がだっ……!」
「凄いそそる。可愛いな、クラウド」
 振り上げた拳をつかまれて、身体ごと引き寄せられる。
 抱き締められて、それだけで全て赦してしまいそうになるのは少し卑怯じゃないか?
 触れ合った肌からザックスの心音が伝わってくる。酷く興奮しているのが皮膚越しにでも解る。
「……ザックス」
 頬を両手で挟んで、視線を合わせる。
 ……やっぱり、綺麗だ。純粋たる青い瞳。死んでも口に出来ないけど。
「どうした? クラウド」
 無邪気に首をかしげ、そっと手を重ねてくる。ほんの一瞬でも見惚れてしまった事を悔やむ。
「まだ嫌だ?」
「……そんな訳ないだろ」
 見透かされてる。にやりと微笑んで、ザックスはクラウドに口付けた。恋人のキス。熱情。溺れる。満たされる。
 息を殺して、熱い舌に翻弄される口腔内を受け入れる。
「クラウド」
 グローブを奪われ、つかまれた手をザックスの下腹部にへと導かれる。痛いほど張り詰めたそこは、触れただけで脈打つかのようだった。促され、ベルトを外してやる。ジッパーを降ろして下着の中に手を滑り込ませる。
「……どうなってるか、解るか?」
「……っ」
「欲しいんだ、お前が」
 再び色気づいたクラウドの雄を掌で軽く揉み解す。もう片方の手は後ろの双丘をするりと撫でていた。
「やだっ……」
「嘘吐き」
 柔らかく割り開いて、後ろの窪みを露わにする。円を書くように襞をなぞり、少し強引に人差し指を差し込んだ。
「あぁ……、ん……あっ」
「クラウドのなか……熱いな」
 ザックスはクラウドを後ろに向かせて、幹に手をつくよう指示する。どうなるか頭で解っていても、クラウドは逆らえない。腰を突き出して脚を開かされる。
「ふぁ……!」
 すっかり剥き出しになった秘所を舌で嬲られる。皺をなぞり、親指で左右に開いて先端を潜り込ませる。汚い、と云いたくても、あまりに執拗に解される行為に、否応でも反応してしまう。穴をひくつかせるその様子は、傍目で見ても喜んでいるとしか映らないだろう。
「あぅ……は、ダメ……ザック……ス、あ……あ」
「ちゃんと慣らさなきゃ痛いだろ?……痛くしたくないんだよ」
 ぬるりと内部に滑り込んできた指。反射的に腰を引いてしまう。逃げるクラウドを片手でがっちりと捕まえて、更に指を増やす。
「うぁ……、や、はぁ」
 ぐっと押し込めて、関節を曲げる。クラウドの弱い所を狙って引っ掻く。頭の先が痺れる感覚。木に縋りつくように身体を預け、鳴く。
「コッチも元気になってきたな」
「やぁ、さわるな……っ」
「出したばっかりなのに、もうヌルヌル」
 勃ち上がった自身と前立腺とを刺激されて、クラウドは爆発寸前だ。腰をくねらせて逃れようと必死だが、僅かな振動でも鋭く感じてしまう。
「もう……っ、ザ、クス……っ、あ、ア……!」
「『もう』? じゃ、どうしたい、クラウド」
「ふ……っ」
「云って。教えて、クラウド。どうして欲しいんだ?」
 ぞくんと皮膚が粟立つのを認める。
 ――どうして欲しい? そんな事、云わなくても知っているくせに。
「あ……、して、……欲しい」
「何を?」
「……っ、ザックス……を、い、れて……」
 恥辱に眼を瞑る。自分の声が遠くで聴こえた。
 呼応するように、飲み込んだザックスの指を締め付けた。
「……わかった」
 指を一気に引き抜かれ、堪らず悲鳴を上げる。指だけでこんなにも乱れるのに、まだ求め足りないなんてどうかしてる。
 ザックスは穴に自身を擦りつけ、煽る。粘膜が擦れる感触に身震いする。 
 焦らさないで。肩越しに目で訴えかける。それを認めて、ザックスが口の端を歪める。
「はや……く、ザックス」
「ん……力、抜いてな」
 云うが早いか、怒張したそれをクラウドの中に押し入れる。
「うあ……っ」
 腸壁を押し広げられ力任せに挿入され、クラウドは涙を二粒零した。充分に解したといえ、本来はこんな事に使う場所ではないのだから。
 雁首が深みを目指して進むのを止める事は出来ない。
「クラウド……、そんなに締め付けるなって」
「む、無理……っ」
「もうちょっと……全部、入った」
 根元まで飲み込んで、クラウドは熱い息を吐き出す。入り口はきゅうきゅうと締め付けるのに、中はねっとりと絡み付いてくる。
 ザックスの熱に犯されて、心の芯を震わせる。蕩けそうだ。
「動いていいか?……我慢できそうにない」
「いちいち、訊くなっ……!」
 ぐっと引き抜いて、息をするタイミングで押し込む。
「あぁ……っ、あ、はぁ……!」
 腰を両手で固定して幾度となく突き上げる。一突きする度に、クラウドからは歓喜の声が漏れる。ザックスに取ってみれば、手に取るように知り尽くした肉体だ。何処をどう責めれば悦ぶか、熟知している。
 振動で木が軋み、葉がゆらゆらと落ちていく。汗で湿った肌に張り付いても、それを払う事も出来ない。
「ふ……あ、ア、あっ……は、ザックス……」
「クラウド……!」
「い、あ……っ、ダメ、気持ち……イイ」
 身体がザックスを求めるのを止められない。深いところまで捻じ込まれ何度も揺さぶられ、箍が外れそうになる。
「もっと、奥……っ」
「奥? これ以上……?」
「ザックス……! や、あっ……あぁん、ア、ザックス……ぅ、ザックス……!」
 意識が飛びそうに、息も絶え絶えにザックスの名を懸命に叫ぶ。
 うわごとのように。
 強請る。
「も……イきそ……クラウド……!」
「ザ……ックス」
 腰を振る速度が急に上がる。絶頂が近い事を悟り、クラウドが腰を浮かせる。
 一緒に。
「ア……っ!」
 到達の瞬間、ザックスは勢い良くクラウドから引き抜いて、精を外に向けて放出する。その余韻でクラウドも高みに上り詰める。二度目の射精。量こそ少ないが、突き抜けていく快感は計り知れない。
 がくん、と膝を落とし、クラウドは汗と涙と唾液とに塗れた自身の顔を拭う。
 木の根元に、白い液体が掛かっている。どちらの物か解らないそれを指でなぞる。
「……クラウド、大丈夫か?」
「うん……」
 放心したままのクラウドの肩を抱く。子供にするように頭をぽんぽんと叩かれ、力なく応える。
 こんな場所で……しかも訓練中にこんな事をしてしまうなんて。兵士失格だ。ついでに云えばザックスもソルジャー失格だ。
 だが、怒れる気も失せてしまう。
 ザックスの屈託ない笑顔を見せられては。
「馬鹿……」
「なんだよ、クラウドだって気持ちよさそうだったじゃないか……」
「仕方ないだろ……っ。もういい、二度としないからな!」
「うん。今度はベッドでしような」
 そういう意味じゃない。クラウドは疲れたように頭を抱える。
 でも。
「……約束、だからな」
 風が吹き付けて、クラウドの言葉を攫う。聞こえなくてもいい。ただ、想っていれば。
「……じゃ、俺行くから」
「あぁ」
 軽く身支度をして、ザックスは剣を背負い直した。クラウドも、汚れた下着をそのままにズボンを履き直す。足腰に力が入らなくて、仕方なく木にもたれかかりその場に腰を下ろした。
「──連絡、するから」
 一つうなづいて、ザックスは文字通り風のように掛けていった。その背後が見えなくなった事を確認して、クラウドはおそるおそる携帯に手を伸ばした。
「……はい。ソルジャー、此方を通過しました。……はい、俺では敵いませんでした。はい、申し訳ありません」
 アイツには、一生かかっても敵わないだろう。でも、いつかは。通話を切ると、クラウドは天を見つめその青を瞳に反射させた。
 いつかは、勝てるだろうか。その為には更に訓練しなければ。あの天にも昇る気持ちを胸に、クラウドはまた新たな夢を思い描くのであった。
 



     END
UP:2007-09-25