012.的中
……軽い胸騒ぎ。こういう時、なんて云うんだっけ? 虫の知らせ? 何かが呼んでいる。
ザックスはクラウドの部屋の前でノックを躊躇う。
嫌な予感。
「クラウド、いるのか?」
──的中。
返事のない室内に強引に押し入ると、部屋の主は酷く青ざめた表情でベッドに横たわっていた。規則正しい寝息を立てて、深い眠りに陥っている。
「おい、クラウド……っと」
揺り起こそうとして、留まった。眠っているのに起こすのは忍びない。
大方、遠征に出て車酔いでもしたのか。元々色の薄い顔色が今はますます白く見える。
ザックスは汗ばむ額を拭って、ふと微笑む。
せっかく逢いに来たのに。
「……頑張ってるんだよな」
一般兵の業務がどれほどキツイか、ザックスにはわからない。
けれど、決して投げ出さず愚痴も零さず、乗り物酔いにも耐えて働くクラウドを尊敬する。
「……ん……っ」
額を撫でる手を引っ込める。起こしたか。二、三度目蓋をしばたかせて、クラウドはベッド脇のザックスに気付いた。
「えっ……ザックス……?」
「ごめん、起こしちゃったな。だるい? 水でも持ってこようか?」
「……なんか、変なカンジ……」
慌てるザックスを尻目に、上体を起こす。
「ザックスの、夢……見てた」
「俺の?」
「本当にいたから……びっくりした」
まだ眠りから目覚め切ってない表情で。
「俺はどこにでもいるぞ。お前の傍に、ずっと。嫌だって云ってもな」
「……うん」
「ホラ、もう少し寝てろよ。顔色悪いぞ。水、持ってきてやるから」
「いい。……ザックス」
立ち上がろうとしたザックスの手を掴んで、再び布団の中に潜り込む。
「傍にいてよ……」
布団からちょこんと出した指先が、ザックスを離さない。無意識なんだろう。ふと意識を手放したクラウドを見つめ、ザックスは鼓動が収まらない。反則だ。
さっきより良くなった顔色が物語る。予感はきっと、この瞬間の為にあったのだと──
安心しきったクラウドの寝顔に、そっとキスを落とす。ただ傍にいること。簡単でいて、とても難しい。
だけど。
今だけは、その眠りを守るために。掴まれた腕を布団の中にしまって、クラウドの手に自身の手を重ねた。傍にいるよ。だからおやすみ、クラウド。ザックスは深く瞳を閉じて、額をベッドに押し当てた。クラウドの見た夢を想像しながら、自分も浅い眠りについた。静かに、そっと……
END