011.酔い


 
 ──頭が割れそうだ。
 ビール二杯でこれだけ気分が悪くなる自分に驚きだ。クラウドは換気をよくしようと窓を開ける為、無理やり起き上がる。
 足元が覚束ない。がくっと膝から力が抜けて、床に転ぶ。痛むより先に眩暈が来た。
「おい、クラウド大丈夫か!?」
 ズキズキと痛む頭を抑えて、クラウドは仰向けになる。覗き込むのは、コップを片手に心配そうに見つめるザックスだ。
 見慣れない天井。窓があると思った場所には板が打ち付けてある。
 妙に色の入った照明。安物だが派手なベッド。小さな枕が二つ。……と、ここまで見回して、ここが自分の家でない事に気付いた。
「これ、とりあえず飲めよ」
「うん……」
 背中を支えてもらってクラウドは、受け取ったグラスを飲み干す。よく冷えた水だ。
「ここ……どこ?」
「え? いや、休憩所だけど」
「……もう、大丈夫だから、帰る」
「いや、待てよ!」
 立ち上がろうとするクラウドの手を掴んで、引き止める。勢いでコップが床に転がる。カーペットに大きく染みを作って、コップはベッドの下に転がっていった。
「まだ酔いが醒めてないだろう?……無理しなくても、ちゃんと帰りは送るから」
「でも……」
「……云い方がおかしいか? じゃあ、ここに……いてくれないか、クラウド」
 抱き留めるようにクラウドを引き寄せて、ザックスが低く呟く。
 何だろう? 目が回る。酔いのせいではなく。
 ザックスの腕の中。ふわふわする。きし、と音を立ててベッドの上に押し倒される。だけど、それすら不快に思わない。
 まっすぐと降りてくるザックスの視線。痛いくらいに。
「ザックス……」
 躊躇いがちに触れてくる吐息が、熱くて。重ねた唇が腫れたようにじんと痛む。何度も何度も角度を変えては差し込まれる舌に翻弄されて、クラウドは息を詰める。
 交わって、絡み合う。
 まるで夢の中を歩いているように。 
 ザックスの体温に酔いしれる。
「んっ……ふ、は……ア、っ……」
 ……あぁ、そうか。朦朧とした意識の中でクラウドは、はっきりと自分の声を聞いた。
 酒ではなく、ザックスに酔う。それが、一番心地いいのだと。
 火照った肉体はザックスを求める。あらぬ所に血が集まって、自身の鼓動を速める。
 ──気持ちいい。
「……クラウド?」
「うん……?」
「大好き」
 極上の笑みで。クラウドは面食らったように目を見開いて、そして静かに微笑み返した。もっと酔わせて。言葉で、身体で、こころでもっと──


 





     END