004.好き
「……じゃさ、甘いものと辛いものならどっちが好き?」
「別に……どっちでもいい」
「ファイアとブリザド、どっちが好き?」
「敵によって使い分ける」
ザックスは頭を抱える。そういうことじゃないくて。
「俺は、クラウドが好きなものが知りたいんだよ! 答えは全部好きか嫌いかで!」
「なんでだよ。そんなの、人の勝手だろ?」
「おまえは、出されたおかずは全部残さず食べるタイプだろ」
「それの何処がいけないんだよ」
苛立った様子でザックスが頭を乱暴に掻いた。訳もわからずきょとんと見るクラウドは、どこか不機嫌そうに唇を尖らせる。
「だって、嫌じゃん……俺と他の奴どっちが好きかって訊いたら、どっちでもいいなんて云われたら」
「なっ……」
「傷つく」
しょぼんと俯く姿は、叱られた仔犬に似ている。クラウドはそのうな垂れる頭を撫でてみた。
「……クラウド、俺の事好きだよな?」
「そ、それは……」
好き嫌いが曖昧なのは、今まではっきりと意思表示してこなかったから。
でも、『どっちでもいい』と『どうでもいい』は違うんだ。
「中途半端な答えなら要らない。クラウド、どっち?」
「い、云えるわけないだろ……」
ザックスが迫るように肩を掴んだ。驚くクラウドを制して、強引にキスをする。
「今の……好き?」
「好きって──」
「じゃ、コレは?」
そういって、耳たぶを甘噛みし、舌を這わせる。ぞくっと身震いするクラウドの肩をそっと抱き締めて、床に横たわらせる。
「コッチは?」
肌蹴た胸元に官能の印をつける。小さく息を漏らすクラウドは、もはやどちらがどうという思考さえ出来なくて、ただのしかかるザックスの背中に爪を立てる。
「カラダに訊いた方が早いな」
「んっ……ずる、い……!」
「……俺とこういうことするの、好き? 嫌い?」
真正面から見つめる。クラウドは羞恥に目を逸らす。
云い慣れてないから、戸惑うんだ。ザックスの想い。受け止めれずに、誤魔化してしまうんだ。
「嫌い……じゃない」
クラウドはやっとの思いで呟く。嫌いじゃない。ザックスは初めて目を輝かせてクラウドの手を取った。
「本当だよな?」
「嘘じゃない」
「……そうだな、カラダが証明してくれる」
そう撫でる内腿はすでに反応し、少しばかりズボンの股間を持ち上げている。クラウドが恥ずかしさに身を起こすと、問答無用で唇を奪った。舌を絡めきつく吸い、嬲る。
「好き、なんだよな」
クラウドの好きなもの。いくらでも与えてやりたい。無防備な空。風の匂い。たとえば、雨降りの午後。残さず見せてやりたい。両手いっぱいの花。君の喜ぶもの、すべてを。
それが、俺の出来る唯一の事。
「俺は、ザックスがいれば……いい」
「え、ちょっと……」
「他に好きなものなんて、ないよ。ただ──」
空っぽの両手に飛び込んで、クラウドが微笑む。ザックスは意味を掴みかねて動きが止まる。
貴方がいれば、世界は色付き廻り始める。
だから、君が好き。
「だったら、俺をあげる。クラウドに、全部」
「……俺も、ザックスにあげる。だから……」
クラウドはザックスの頬をむにっとつねって、愉快そうに笑った。
「いつでも、好きって云ってくれよな」
望むことはただひとつ。お互いが相手を想う心を。
──好きだと笑い合える日々を。
END