002.秘密



 ──誰にも云えない秘密がある。


「ふぁ……っ、あ、はぁっ……っ、ん」
 薄く開いた唇を震わせて、クラウドは下半身を責め立てる快楽の波を押し留めようとする。
 しっとりと汗をかいた肌は、ほんの少しでも触れられただけで粟立つ。
 刻々と所有の印をつけるザックスの熱い唇。
 首筋に。脇腹に。内股に。
「やめっ……ろ、そんなトコ……!」
「嫌なのか? 本当は好きなくせに」
 官能の証。きつく吸い付いては離れる。──本当は好きなくせに。ザックスの言葉が心を縛る。
 もどかしく唇を震わせて、クラウドは仰け反るように白い喉を晒す。花芯に熱い息が触れたかと思うと、ザックスの口唇に飲み込まれた。滴る先走りを舌先で掬い取り、窪みに押し付ける。
「あう……っ、ふ、……ん」
 亀頭を舐り裏筋に吸い付き、手で扱く事も忘れない。硬く張った雄は今にもはち切れそうに、クラウドの欲を体現していた。
 嫌なのか? ザックスの言葉が頭をよぎる。
 クラウドは自身の腕を抱くように掴んだ。
 違うんだ。とても、言葉では云えやしないけれど。
「ザッ……クス、もうっ、……あぁっ、ん、んぅ……っ」
 懇願するように頭を垂れて、堪え切れない程込み上げてくる熱を押し殺す。
「わかってる、クラウド。欲しいんだろ?」
 ──誰にも云えない秘密がある。本当は、キスも口淫も嫌いじゃない事。ザックスの、余裕があるようで実は誰よりも切羽詰ってる行為が嫌いじゃない事。まっすぐ見つめる青い瞳。乾いた黒い髪。声。吐息すらも。
 そして何よりも、ザックスを……欲しがっている事。
「……欲しい……っ」
 自身ではなくザックスの腕を掴み取り、クラウドは赤く火照った頬で呟く。一瞬たじろいで、しかしにんまりと嬉しそうにクラウドの額にキスを落として、ザックスは頷いてみせた。
「力……抜いてて」
 気遣うようで容赦なく、ザックスは両の脚を割り開いてその中心を撫でる。指が掠める度にビクビクと収縮する秘所を無理矢理に押し開いて、ザックスが侵入してくる。
「はぁっ……ん、あぁ……!」
 身体ごとザックスを受け入れて、クラウドは歓喜の吐息を漏らす。ほんの少し強引に腰を進めるが、入り口の抵抗はなくすんなりと根元まで飲み込んだ。
 繋がった部分が痛い。けれど、望んで手に入れた痛みだ。
 クラウドはうっすらと涙を滲ませながらザックスを見返す。
 欲しい物をくれる。そんな彼だから……愛しい。
「ザックス……」
 しっかりとザックスの背中に手を回し、抱き締める。皮膚を伝って気持ちが解ればいいのに。ザックスの熱を内奥に感じながら、もたらされる快感に酔いしれる。浅い律動。更に深く。揺さぶられ、解放する。離さないようにしがみついて、もつれる舌でザックスの名を呼ぶ。
「ザッ……クス、ザックス……っ、は、あん……っ」
「クラウド、キツ……は、もっと……」
「ザックス、……ックス……!」
 誰にも云えない秘密。だけど、いつか打ち明けてみたい秘密。
 きっと、いつかは隠さずに。
 それまでは、明かすことなく。
 いつまでも、想っているだろう。



     END