001.ほおづえついて
カーテンの隙間を縫って差し込む日差し。重苦しい目蓋を開けて、クラウドはベッドの脇の時計をチェックする。午前七時。ハッと起き上がろうとして、今日が休日だとすぐに思い当たる。
腹の上に覆いかぶさる逞しい腕。持ち主のザックスは規則的な寝息を立てて未だ夢の中だ。
這い出そうとして諦めた。寝返りを打ってうつ伏せになると、鼻先をくすぐるザックスの髪を払う。
枕に頬杖をついて、じっと寝顔を見る。
「……」
閉じられた瞳。小高い鼻。半開きの唇。そこまで視線を辿って、気恥ずかしさに目を逸らす。
あの唇が、身体中を慈しんだのかと思うと、いてもたってもいられなくなる。
まるで、魔法がかかったかのように。
ザックスが触れて回った所が赤みを増す。
「……ザックス」
小さく声を掛けても、目覚める気配はない。
そっと目蓋に掛かる前髪を払いのけて、そのこめかみに口付ける。
だが、反応はない。
ザックスの唇のような魔法は、クラウドには無理なのか。
ふてくされたまま、クラウドは幸せそうに眠るその頬をつついてみせた。
「……馬鹿」
「聴こえてるぞ」
その手を遮るように掴んで、今の今まで息を潜めていたザックスが目を開けた。驚く間もなく力強い腕に抱き止められて、クラウドは無防備な唇を堂々と奪われた。
「……なに、するっ……」
「クラウドこそ、俺に何したんだよ」
「べ、別に……!」
たった一度のキスで。
身体の自由さえも利かなくなる。
──それが、恋のマジック。
「俺に見惚れるのもいいけど、寝込みを襲うならもっと大胆に来いよ」
「誰が襲うか……!」
いつから気付いていたのだろう。流石はソルジャー。気配を絶つのも読むのもお手の物だ。とりあえず今はザックスの腕の中で、今度はどんな反撃をしようか考えよう。まだ一日は始まったばかりなのだから。
END