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 013.レンズ 


 
 レンズ越しに見る世界はどこか歪んでいて、気分が悪くなる。
 
 
「アレ、眼鏡」
 五番街のホーム。待ち合わせに34分も遅れた割に悪びれた様子もなく、クラウドを見つけた途端ザックスはその顔を指差した。
 銀の、安物のフレーム。端正な顔立ちに似合うようでどこか違和感がある。見慣れないせいもあるが、どこか近寄りがたいイメージを漂わせている。ニット帽を目深に被り、寒さに震える指先をコートの袖に忍ばせる。
「どういう風の吹き回しだ?」
「……変、かな」
「いや、別に」
 クラウドは眉をしかめ、そのフレームに指を掛けた。度は入っていない、所謂ファッションメガネではあるが、デザインはかなり古いものらしかった。ザックスはまじまじと見つめ、わざとらしく屈み込んで顔を覗く。
「……なにニヤついてるんだよ」
「いや、かわいいなーと思って」
 クラウドは問答無用でザックスの頭をはたいた。
「照れるくらいならしてこなきゃいいのに」
「照れてない!」
 クラウドは声を震わせる。ザックスは人目を憚らずクラウドの頭を撫でて、ますます反感を買っている。クラウドは頬を真っ赤に染めながら、コートの袖で口元を隠した。
 別に、大した理由でもない。久しぶりに二人で食事に行くのだから、少しくらいはお洒落した方がいいかと考えただけだ。
 対するザックスはといえば、いつものソルジャー服にジャケットを羽織っただけだった。仕事がない日でもほとんどその格好なのを知っている。
 ──剣を携えて敵に挑むザックスはカッコイイ、と思う。口に出すことはないけれど、憧憬の念を抱く。
 そのザックスの隣に並んで歩く。ちょっとした優越感。
「今日は何食うかー。クラウドは何食べたい?」
「あったかい物ならなんでも」
「確かに、今日は冷えるな」
 ザックスは天を仰いで長く考える。じゃあ、かに鍋でも喰うか、熱燗でも啜りながら。そんな風に提案する。クラウドはうなづいて、少しズり落ちた眼鏡を指で上げた。
 視界が真四角区切られて、まるで世界が切り取られたよう。
 レンズは街の灯りを反射し視界を眩ませる。レンズ越しに見る世界はどこか歪んでいて、水槽を覗き込んだ時のように酔う。大きいものは小さく、小さいものは大きく。モザイクラセン。ツギハギだらけの矛盾セカイ。
 信じられるのは、目の前にいるザックスだけ。
 ふとザックスを見上げると、その輪郭を光が包むようだった。
 ……綺麗、だな。
「あれ、ザックス? ザックスじゃないか!」
 道の反対側から投げ込まれる声。駆け寄ってくるのはソルジャーらしき細身の男。クラウドも知っている。カンセルだ。
「ようカンセル。まだ仕事か? ご苦労様」
「そうだよ。そっちはデートか」
「これからメシ行くトコ」
「見たことない子だけど、また新しい彼女か? 相変わらずで羨ましいな」
 云われて思わず二人で顔を見合わせる。
「……俺、ですけど」
 眼鏡をずらして顔を見せる。気付いて、カンセルが二人の顔を交互に見やる。
「え、クラウド? あ、アレ?」
「おいおい、クラウドの可愛い顔、忘れた訳じゃないよな?」
 可愛いは余計だ。無言でザックスの脇を肘でつつく。
「いや、全然わからなかったよ。眼鏡のせいかな? 悪いわるい。またどっかで引っ掛けた女かと……」
「うるさい!」
 カンセルとザックスは二、三言交わして、まだ仕事だからと云ってその場を去る。クラウドは居心地の悪さに眼鏡を何度も撫でていた。
「……俺、そんなにいつもと違って見えたかな」
 ぽつりと呟くと、ザックスは大きな掌でポンポンとニット帽を叩いた。子供にしてやるみたいに。
「ザックスはすぐ俺だってわかった?」
「当然だろ。カンセルの目がおかしいんだ」
 そうなのかな。クラウドは釈然としないまま、歩き出したザックスの後ろをちょこちょことついていく。
 もし、もし……ザックスだけが気付いてくれたのなら。
 レンズ越しのこの歪んだ世界でただ一人。
 手を、差し伸べてくれるのは。 
「……なに?」
 ザックスが微笑み返す。無意識に手を繋いで握り締めていた。握り返されて、クラウドは小さく俯いた。
「なんでもない」
「そう?」
 すっとごく自然に顔を寄せてくる。キスされる──そう身構えた一歩手前で、ザックスは躊躇うように止まった。
「……それ」
「え?」
「似合ってるけど、やっぱり邪魔だな」
 ザックスはレンズを指先でつついて、不満げに呟いた。云わんとする意味を掴んで、クラウドは頬を染め上げる。
「……馬鹿」 
 確かに邪魔かもしれない。キスするタイミングを失って、クラウドは少し残念そうにフレームを撫でた。二人を隔てるガラスの冷たさ、硬さ。
「ごはん、食べたらな」
 それまで、おあずけだ。ザックスは口を尖らせるがクラウドは有無を云わせない。まずは暖かい物でも食べて、全てはそれからだ。
 歪んだ世界とサヨナラする為に。
 優しい口付けをしよう。
 何度でも。
 
 
 
 
   END☆
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